返してもらうよッ!!!

それは、アシュトンが何気なくだがプリシスを捜していた時であった。
バレバレではあるが、彼はプリシスに恋心を抱いていたりする。
しかし、当事者であるプリシスは全然気付かない。
それどころか、彼女は意中の男の子に夢中だとか。(チサト談)
それでもめげずに、なんとかアプローチしてはみるアシュトン。
今日もアプローチしようとして、彼女を何気なく捜してみるのだが………
「どっこ行ったかなぁ?」
アームロックの街中で、彼はキョトキョトと辺りを見回しながら歩き回る。
宿には真っ先に行ってみた。
出て来る時に酒場を通ったが、見当たらなかったし、
やまとやにも、スキルギルドにも、武器屋にも、
そして色々と彼女の興味を引くものが置かれているミラージュ博士の家にもいなかった。
いつも屋根に登っている彼女の事だからと思って、
足が竦むのを必死で堪えながら屋根に登ってみたりもしたが、
それでも彼女を発見する事はできなかった。
街中駆けずり回ったアシュトンは、ついに疲れ果てて、その場にへたり込んでしまった。
高い場所が怖いという事も忘れて、彼は足をぶら下げて直角の屋根に腰掛けた。
太ももの上に肘で頬杖を付き、ハァと疲れの色が見える溜息をついた。
「……これだけ捜してもいないなんて……………ホントどこ行っちゃったかなぁ?」
彼がふと、雲の流れる穏やかな空を見上げた時、背中でギョロがギャフギャフと騒いだ。
「え、どうしたの?」
「ふぎゃぁ!」
「ギャ!?」
ギョロだけでなく、ウルルンまで騒ぎ出した。
「ど、どうしたんだよ2人共!!」
アシュトンがバッと立ち上がった時、ギョロとウルルンは揃ってばこッ!!とアシュトンの頭をアゴで殴った。
「あいた!!! な、何すんだよぉ、痛いじゃないかぁ!!」
『いいからしゃがんでいろ!!! 余計な物を見なくて済む!』
ギョロが(アシュトンにはわかる言葉で)そう言ったのを聞いて、アシュトンははぁ?と声をあげる。
「余計な物ぉ?」
『バカ!! 言うんじゃないっ!!!』
ウルルンが怒鳴ると、ギョロははわぁ!と慌てた様子でアシュトンの目を、その長い首でギュゥッと隠した。
「うわぁ!! 何すんだよッ!!」
『大人しくしてろ!! 直に終わるから!!!』
「だから何があるんだよッ!!! 好い加減にしろ〜!!!」
アシュトンはどりゃぁ〜!とギョロののどから抜け出し、ハッと止まった。
彼の視線の先を見て、ウルルンはあちゃ〜というため息をついた。
その視線の先には、プリシスとクロードがいた。
2人は密着してた。
キス………………してた。

アシュトンの頭の中で、そんなテロップが流れた。
クロードとプリシスは、街の裏路地で、こっそりとキスしていたのだ。
ガクンとアシュトンはその場に座り込み、ハハッ……と吐息だけで笑った。
「なんだ………道理で見つからないワケだよ………あははは………」
彼は笑っていた。
声だけは。
その目には、涙が滲みまくっていて、なんとか溢すまい溢すまいとしているらしく、
目元がフルフルと小刻みに痙攣していた。
「ちくしょぉ………!! なんか………こういうの……すっごくボクらしくないけど………
 悔しい………………!! すっごく悔しいよぉぉッ……………!!」
「ぎゃふぅ……(アシュトン……)」
ウルルンは哀しそうな顔をして鳴いた。
ギョロは、しまった〜……といった顔つきで、アシュトンから目を反らしていた。

「クロード。」
それから5日ほど後の事。
ギヴァウェイで3日ほど休む事になった一行は、宿に荷物を置いて、思い思いの場所へとPAしに行った。
クロードも外に出ていこうとしたのだが、そんな彼を、アシュトンは入り口で呼び止めた。
「なんだ、アシュトン?
 占いだったら付き合わないぞ。 どうせ良くない結果が出るから。」
「話があるんだ。 ………ちょっと、来てくれる?」
アシュトンが言うと、クロードはアシュトンの方を向いて腕を組んだ。
「なんだよ。 ここじゃ言えないのか?」
「ヘタな横槍とかは入れられたくないんだ。
 ………それとも、2人だけで話したらマズイ事でも?」
「いや、別にマズかないけどさぁ………」
クロードは頭を掻き、仕方なさそうに宿の階段を上った。
「部屋で良いか?」
クロードの言葉に、アシュトンはコクリとうなずき、2人は揃ってクロードの部屋に向かった。
クロードは、個室(ギヴァウェイは個室じゃなかっただろうが!!)の扉を開け、アシュトンを中に入れる。
部屋には、クロードの剣やらフェイズガンやらが置いてあり、
ベッドの上には彼がこの前買った本が置いてあった。
クロードは窓のカーテンを引き、明かりを少し薄暗くした。
「これで人に見られたりはしないよ。
 で? 話って?」
どうやらクロードは、アシュトンが誰にも言えない様な相談事を持ちかけて来たのだと思ったらしい。
まぁ、一応は当たっているのだが。
アシュトンは、オズオズと、一つ一つ喋り出した。
「あのさ。 クロードって………プリシスと付き合ってんの?」
いきなりの質問に、クロードはカクンッと肩膝を折り曲げた。
「い、いきなり何。」
「ボクはプリシスの事がすっごく大好きなんだ!
 だから……その…………」
アシュトンの言葉に、クロードは来る時が来ちゃったんだな〜と思った。
「お前がプリシスの事を好きなのは知ってた。
 ……けど、彼女は僕が好きだって言ってくれた。
 僕も彼女が好きだから、まぁ、僕らは一応付き合ってるって事になるのかな。」
「キス、何回くらいした?」
べちゃ。
クロードはそのまま前のめりに倒れ、床に突っ伏した。
「お、お前、そんな聞きにくい事平気で聞いてくるヤツだったっけぇ!?」
赤くなった鼻をさすりながらクロードが怒鳴ると、アシュトンは「それで」と言って、キュッと肩を押さえた。
「どう……だったの。」
「どう…って?」
「この前、アームロックでキスしてたの見ちゃったから……
 どんな感じだったのかなー…って。」
「み、見てたのかよ!!?」
「答えてよ!」
アシュトンの声に、クロードは一瞬ウッと退いた。
アシュトンは、今にも泣き出しそうで、暴れそうなほど怒っていたからだ。
クロードは、フムと一時の間考え、ポンと手を叩いた。
「カワイかった。」
「カワイイ?」
「そう。 何て言うか、子供みたいっていうか、ぷにぷにしてて……
 ちょっと冷えてるけど、やわらかくて温かいって言うか……
 そうだね、エビみたいに張りがあったね。」
ちなみにクロードの執筆レベルは4。(文才はなし。)
その時、アシュトンはカツンとクロードの目の前まで大きく一歩を踏み出し、彼の目の前に立った。
その目は、明らかにクロードを許せないといった眼差しであった。
「……この唇か。」
「フフッ、どうする? 殴る?」
クロードは少し余裕のある目をしてアシュトンを見た。
するとアシュトンは、「いや。」と言って、バッとクロードの唇を奪ったッ!
もちろんクロードは驚いて、しかも強烈な出来事だったものだから、体を強張らせて目をギュッとつぶる。
「んんんんんんんんんんんんんんんんん!!?」
口をふさがれたまま、クロードは絶叫らしき声をあげる。
アシュトンはというと、がっちりとクロードを抱き込んで離さない。
彼の背後では、ギョロとウルルンがふぎゃぎゃギャフギャフと騒ぎまくっていた。(そりゃそうだ)
『乱心したかアシュトンッ!!?』
『何考えてんだよぉ!!!』
アシュトンはクロードにキスする事、約30秒ッ!!!
ようやくアシュトンはクロードを解放する。
と同時にクロードは両腕でアシュトンの胸を突き飛ばし、その反動で後ろへと飛び退る。
慌ててやったものだから、混ざり合った唾液が糸を引く。
クロードは顔を真っ赤にさせ、目を潤ませながら口元を拭った。
「な、な、な、な、何すんだよッ!!!
 こんな事したって、プリシスとキスした事にはならないんだぞッ!!!」
クロードが言うと、アシュトンは息を止めていたらしく、荒くなった呼吸を整えながら、
「ボクにもわかんないよ…」
と、弱々しい声で小さく言った。
「なんか、カーッとなって、気がついたらこんな事してて………
 良くわかんないけど、1つだけハッキリしてる事があるんだ。」
「何。」
クロードが問うと、アシュトンはハッキリとした口調で
「返してもらったんだ。」
と言った。
「は?」
「ボクだって、プリシスと上手くいったら、キスするつもりだったんだよ。
 それなのに……クロードが先にしちゃうから……………
 だから、返してもらったんだ。 彼女の……ファーストキス。」
アシュトンの言葉を聞いて、クロードは潤んだ目をゴシゴシと拭ってフゥと溜息をついた。
「ファーストキスってのは、一番最初のキスだからそう言うんだ。
 返すも何も、もう済んでしまったものを返すなんて、できるわけ…」
「理屈じゃないんだよ。
 言葉でそう理解する前に、気持ちが体を突き動かしてたんだ。」
珍しくハッキリと言うアシュトンのその様子に、クロードはどこか感心を抱いてしまった。
そしてフムと唸って、「よし」と言った。
「だったら、セカンドも返してもらうかい?」
「へ!!?」
これにはアシュトンだって驚く。
なんで? どうして?
彼の驚いた顔がそう言っていた。
対してクロードは、ニッと笑みを浮かべながらアシュトンの目の前まで歩いて来て、その両肩を軽く掴んだ。
そしてジッとアシュトンの少し小さな目を見つめる。
「返せるものでもないけど………それで気が済むなら、
 僕はいくらでも返してあげるよ♪」
その笑えない言葉に、アシュトンは真っ赤になって口をパクパクさせるばかりであった……


作成当時やってた人気番組の伝説と化したコーナーの珍事を元に、 キスを返してもらうという設定で描いてみました。
2人とも、好きなのはプリシスです。
やおいじゃぁないかもしれないけども、でもキスあるし(笑)
むつかしいですね。